恋口の切りかた
何の話かわからず、俺と冬馬は首を傾げて、

「そうか」と、親父殿は顎をごりごりと擦りながら青文を見た。

「では秋山は──」

「はい、おそらくは」

「藤岡や菊田に消されたか」


消された──?


親父殿が口にした言葉は、随分と不穏なものだった。


俺は、頷き合うこの国の二人の重臣を見比べて、


「この国の真実を、お二人にもお話したいが、宜しいか」

と、青文が俺と冬馬を目で示して、親父殿に尋ねた。


「冬馬様には、盗賊だった実の父親がいかなる理由で殺されたのか、
真実を知る権利がございましょう。

そして円士郎様も、
十一年前に端を発する晴蔵様と闇鴉の一味、そしてこの国の因縁に、
もはや完全に巻き込まれております」


青文がそう言って、


「よかろう」と親父殿が首を縦に振った。


青文が俺と冬馬に向き直った。


「何の話だ……?」

掠れた声で尋ねた俺に、

「よろしいか。
お二方とも、これより私がお話する秘密──お命が尽きようとも他言することまかりなりませんぞ」

城代家老は、金髪の下の緑色の双眸に、かつてないほどの真剣な表情を浮かべて言った。
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