恋口の切りかた
「方便だァ?」

って、嘘ってことかよ!

「左様。この国で起きた十一年前の事件について、『当時の着座家以上の身分の数少ない人間が知る真相』です。

そしてこれから私が話すのは、十一年前の事件について、『当時の上席家老と御三家の当主、そして左馬允様のみが知る真相』」

「なに……?」

「数えで十五だったこの私が、その重臣たちの前で解決して──天童だなどと騒がれた事件の真相ですよ」


それは──


この国の改易騒動では──ないのか?


「十一年前にこの国で起きたバラバラの事件は、皆一つに繋がっているのです」


青文がそう言うのを聞いて、
俺の脳裏を、かつて隼人が口にした内容がよぎった。



家中に知られているこの事実の他に、十年前の改易騒動にはまだ隠された何かがあるってのか?

十五のガキを天童だと周囲の大人に認めさせて、二十歳の若さで城代家老にするような何かが……?



息を殺して話の続きを待つ俺と冬馬の前で、


「円士郎様、十一年前に闇鴉の一味によって殺されたのは、菊田水右衛門様の御子息ではありません」


そう言って青文が語ったのは、


俺が全く知らなかった、この国の驚くべき秘密だった。
< 2,018 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop