恋口の切りかた
「海野──いや、夜叉之助が返してきた、貴様の脇差しだ」
親父殿は、あの脇差しを俺の前に置いて、ニヤリと唇を吊り上げた。
「一矢報いるならば、これを使うがよい」
俺はあの屈辱を思い出して、怒りが蘇るのを感じながら「は」と返事をして、
「それから、これは儂からの最後の手向けだ。受け取れ」
親父殿は、脇に置かれていた親父殿の刀を手にして、俺に差し出した。
「それは──」
俺は目を見張る。
「お前が欲しがっておったろうが。吉道の一振りだ」
差し出されたその刀は、丹波守吉道の幻の一刀で、
簾刃に赤みを帯びた五葉の刃文が星を散りばめたように入り、
まるで優美に水面を流れる秋の紅葉のように見えることから「楓星」という。
これまで俺がいくら欲しがっても一蹴されてきた、親父殿のお気に入りの刀だった。
「責めや面倒事は全て儂が引き受けよう。
お前は後顧の憂いなく、存分に致せ」
親父殿が言って、
先刻の青文の言葉が耳の奥でこだまし、目頭が熱くなって視界が霞んだ。
「はい」
俺はこみ上げてくるものに奥歯を噛んで耐えながら、両手で捧げ持つようにして刀を受け取った。
親父殿は、あの脇差しを俺の前に置いて、ニヤリと唇を吊り上げた。
「一矢報いるならば、これを使うがよい」
俺はあの屈辱を思い出して、怒りが蘇るのを感じながら「は」と返事をして、
「それから、これは儂からの最後の手向けだ。受け取れ」
親父殿は、脇に置かれていた親父殿の刀を手にして、俺に差し出した。
「それは──」
俺は目を見張る。
「お前が欲しがっておったろうが。吉道の一振りだ」
差し出されたその刀は、丹波守吉道の幻の一刀で、
簾刃に赤みを帯びた五葉の刃文が星を散りばめたように入り、
まるで優美に水面を流れる秋の紅葉のように見えることから「楓星」という。
これまで俺がいくら欲しがっても一蹴されてきた、親父殿のお気に入りの刀だった。
「責めや面倒事は全て儂が引き受けよう。
お前は後顧の憂いなく、存分に致せ」
親父殿が言って、
先刻の青文の言葉が耳の奥でこだまし、目頭が熱くなって視界が霞んだ。
「はい」
俺はこみ上げてくるものに奥歯を噛んで耐えながら、両手で捧げ持つようにして刀を受け取った。