恋口の切りかた
その様を黙って見ていた青文が、何やら折り畳んだ紙を懐から取り出して冬馬に渡した。
「彼が稽古で結城家の道場に来たら、これを宮川鬼之介新三郎三太九郎太郎五郎衛門之進に渡していただけますか」
青文は鬼之介の名前をスラスラと口にして、
「ただし、彼は無関係だ。
ここに書かれたものを作って届けてくれるだけでいい、我々とは関わり合いにならぬようにと伝えてください」
「……承知しました」
冬馬がその紙を手にして少し首を捻った後、懐にしまった。
俺が事を起こす時には冬馬にも伝えるということで、冬馬と親父殿は伊羽邸を後にして結城家の屋敷へと引き上げてゆき、
「父上! 私は結城晴蔵の子として生まれてきたこと、誇りに思います」
最後に、親父殿の背中に向かって俺は頭を下げた。
まんまと夜叉之助の罠にはまった己の未熟さを呪いながら、
「どうかお許しを……!」
震える声でそう口にした俺に、
親父殿は黙したまま頷いて去った。
「彼が稽古で結城家の道場に来たら、これを宮川鬼之介新三郎三太九郎太郎五郎衛門之進に渡していただけますか」
青文は鬼之介の名前をスラスラと口にして、
「ただし、彼は無関係だ。
ここに書かれたものを作って届けてくれるだけでいい、我々とは関わり合いにならぬようにと伝えてください」
「……承知しました」
冬馬がその紙を手にして少し首を捻った後、懐にしまった。
俺が事を起こす時には冬馬にも伝えるということで、冬馬と親父殿は伊羽邸を後にして結城家の屋敷へと引き上げてゆき、
「父上! 私は結城晴蔵の子として生まれてきたこと、誇りに思います」
最後に、親父殿の背中に向かって俺は頭を下げた。
まんまと夜叉之助の罠にはまった己の未熟さを呪いながら、
「どうかお許しを……!」
震える声でそう口にした俺に、
親父殿は黙したまま頷いて去った。