恋口の切りかた
「結城円士郎、姿を消した貴様がここに現れること、この俺が読めないとでも思ったか?」

清十郎がそう言うのを聞いて、私は温かくなっていた胸がすうっと冷えるのを感じた。

「神崎に命じて、ここはあらかじめこちらの手の者で囲んでおいた。
いかに貴様でも、この人数相手だ。勝ち目はない」

じりっと、周囲を包囲した侍が足を動かす。



私は無我夢中で、円士郎の前に出た。


「逃げて! エン!」


刀を大きく振って、
周りの人間を牽制して、
私は叫んだ。


「早く!」


嫌だ。

エンが……エンが目の前で殺されるなんて、絶対に嫌だ──!


「留玖……」

後ろで小さく円士郎が私の名を口にして、


「留玖様、どうかお下がりください」


すぐに硬い声が敬語を使ってそう言った。


恐る恐る振り返った先で、円士郎は優しい微笑みを浮かべて、

「あなたはもう、私のような者に関わってはなりません」

と、告げた。


そんな──


エン……


私の動きが止まって、


「さあ、捕らえろ!」

嬉々とした清十郎の声が響いた。
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