恋口の切りかた
「じゃあ、そうしますかねェ~神崎殿」


次の瞬間、その場に響き渡った軽薄な声は、

円士郎のものでも
青文のものでもなかった。


「おっと、オマエは動くなよ海野様」


耳に覚えのある声でそう言って、

いつの間にか清十郎の背後に立っていた人影は、清十郎の首筋にピタリと「小太刀」を突きつけた。


え──?


私の頭は真っ白になる。



「あんた……隼人……?」



円士郎のぼう然とした声がそばから聞こえて、



「ドーモ」と、清十郎に刀を突きつけている狐目の侍は、軽い口調で言ってヘラヘラと笑った。



「あんた、切腹したんじゃ……」

円士郎が掠れた声を出した。

「いやあ、未練が多すぎて、化けて出ちゃいましたよ」

私は口を開けた。

「ああ、でもこのとおり、足はちゃんとありますけどね」


そんな軽口を叩きながらそこに立っていたのは、

死んだと聞かされていた秋山隼人で──


ポカンとなる私の前で、


「おつるぎ様を除いて、殿の供をしていた者は全員捕らえろ!

この男に唆されて、謀反に荷担した反乱分子だ!」


神崎帯刀が構えた刀の切っ先を円士郎たちから清十郎へと移して、引き連れていた侍たちにそう命じた。
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