恋口の切りかた
クックック……と青文は覆面の下から笑い声を漏らした。


「すみませんね、円士郎様。

秋山が切腹したということにしておかないと、貴殿は汚名を晴らすことなど考えず、なりふり構わずに海野家に討ち入る可能性があったもので、黙っていました」


青文はそう言って、覆面に隠れた目を清十郎に向けた。


「己が引っかけられたことが不思議か?

神崎が私に、過去の遺恨につけ込んで海野清十郎から手先になるよう話を持ちかけられたと言ってきたのだよ。
そんな気はないが、これを利用できないかとな。

だから手先になったフリをするよう言って、あとは神崎の判断に任せた行動をとらせた」


「馬鹿な……」

隼人に小太刀を突きつけられたまま、清十郎は信じられないという顔をした。


元盗賊の御家老はまた覆面の下で小さく笑って、


「神崎の行動と忠義は、私にも予想外だった。

誰の思考でも完璧に読んで、己の思うまま操れると思ったら痛い目に遭うということだ。

武士というものは時に計りきれない。私や貴様のような者にはな」


清十郎に向かってそう言った。
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