恋口の切りかた
今にも泣き出しそうな声で尋ねた殿に、

「殿、この儂はな、ずっと疑問に思ってきたのだ」

菊田は気怠そうな目で静かに口を開いた。


「我々は十一年前、子供のあなたを殿にしたが──それは過ちだったのではないかとな」

「────」


菊田の言葉を聞いた殿が大きく目を見開いて、


「ではこれが、あなたの出した……私への答えということか……」


肩を落とし、うつむいた。


「円士郎、青文」

と、殿は武器を構えたままの二人に、力無く言った。


「すまなかったな。もうよい、私が隠居すればすむことだ。

私に人望がなかったのだ。
このような事態……やはり私が、主君たる器ではなかったということだろう」


殿は大きく息を吐きながらそう言って、


「黙れ……!」

円士郎が清十郎たちを睨み据えたまま、振り返らずに背中から押し殺した声を出した。

「俺はあの時も言ったぞ。
そんな言葉、二度と口にするな、とな」

「だが、円士郎……」

「何がもういいんだ!?
殿は自分勝手な行いに走った暴君でも、遊蕩に耽った愚君でもない!」


円士郎は朗々たる声で言って、ぐるりと周囲を見回した。


「それに──貴様ら、わかっているのか!?」


円士郎は刀の切っ先を真っ直ぐ清十郎へと向け、

藤岡たちというよりは、周りの侍たちに聞かせるのが目的のような大声を張り上げた。


「そこの男は氷坂家の四男などではない! 盗賊の首領だぞ!」
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