恋口の切りかた
清十郎が──


盗賊──!?


私はびっくりして、


「なんだと……?」

帯刀と隼人が目を丸くした。


「はっはっは!」

響いた笑い声は、清十郎のものだった。

「何を言い出すかと思えば──」

清十郎は冷ややかな目に円士郎を映して嘲笑った。

「謀反人のたわごとですな。
伊羽殿に対する私の言の真似ですか? 何の根拠あってそのようなことを」

確かに、円士郎の口にした内容はあまりにも突拍子のないことに思えて、

辺りを囲んだ侍たちも顔を見合わせてはいるものの、信じている様子の者はいない。


「根拠ならばございます」

青文が覆面の下からボソボソとした声で言って、槍の切っ先で清十郎を示した。

「海野殿の胸の入れ墨ですよ」

「ああ。俺は確かに、盗賊の証である彫り物がお前の胸にあるのを見たぜ。
嘘だと言うならば、今ここでその胸見せてもらおうか」

円士郎の言葉を清十郎は一笑に付した。

「馬鹿馬鹿しい。
それこそ盗賊の疑いがある者と謀反人の妄言に、どうして私がつき合わねばならぬのです」

ちっと円士郎が舌打ちした。

「予想通りの反応か。
だったら──力ずくでその正体暴いてやるまでだ」

刀を構える円士郎を見て、清十郎はますます冷笑を濃くした。

「そのような無礼な真似、できると思うか?」

清十郎がそう言うと同時に、侍たちが円士郎を囲んで──


「盗賊の疑いがある者と謀反人の言では説得力がない、と仰るか」


今にも侍たちの中に飛び込んでいきそうな円士郎を制して、
清十郎や藤岡たちへ向かって歩み出たのは青文だった。
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