恋口の切りかた
立て続けに、恐ろしい速さの斬撃を繰り出した。


雨粒が散る。

武器の質量や形状を生かしきって、振り回す力に体重を上乗せしているのか──女性の腕で振るわれたとは思えない、とんでもない威力の刃だった。

お城では別式女の人たちの薙刀の稽古にもつき合ったけれど、比べものにならない。

一撃受けるたびに、腕にしびれるような衝撃が来る。

円士郎との稽古で彼が振るう剣に慣れていなかったら、到底さばききれない重たい斬撃だ。


「話には聞いていたけれど、本当に小太刀じゃなくて長刀を使うのか」

薙刀を振るいながら、女の人は面白そうに言った。

「女の武芸者も何人か知っているけれど、珍しいわね」

確かに、女の身長と腕力では、小回りの利く小太刀のほうが扱いやすいのだろうけれど、長刀のほうが断然間合いは広がる。

私は昔から男の円士郎たちと一緒に長刀を振るい続けてきたので、もう扱いには慣れてしまっていた。


しかしその長刀の間合いでも、振り回される薙刀の間合いには遠く及ばない。


大振りの武器だから、懐に潜り込めたら勝機はあるのに。


こんな攻撃を受け続けていてはたちまち限界が来る。


私にも、隼人みたいな真似ができれば──


思いながら、上段から振り下ろされた刃をぎりぎりでかわした瞬間、

薙刀は私の後ろの、池の側に立った石灯篭に当たって、石でできた灯篭の縁を斬り裂いた。


ぞっとする。

人間の体など、問答無用で真っ二つにする威力だった。


隙を逃さず懐に飛び込んで刀を振るって──

「加点ね、発想は悪くないわ。でも──」

ニッと赤い唇が笑みを作った。
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