恋口の切りかた
私は唇を噛む。


こんなところで、足止めされている場合じゃないのに──。


うう……どいてよぅ。

エンのところに行かせて──!


私は涙をこらえながら、綺麗な女の人を睨み据えて、


「噂どおり、とんでもない美人だな。こいつは俺も一手御教授願いたいね」


そんな声と共に、背後から女の人に向かって槍が突き出された。


「青文さん!?」


私は声を上げて、


「おや」

振り向き様に薙刀でその一撃を打ち払い、
雨の中に立った金髪緑眼の青年の姿を認めて、女の人が楽しそうな声を出した


「そっちこそ、いい男ね。一手と言わず、お相手願いたいところだわ、緋鮒の仙太──」

くす、と色っぽい笑いを漏らして、

「それとも、伊羽青文と呼ぶべきかしら? 御家老様」

そう言って、殺し屋は薙刀を青文へと向けた。


「さて、誰のことかな」

金髪の若者はとぼけた。

「俺はただの遊水って男だぜ、国崩しの断蔵」

「そういうことにしておきましょうか」

女の人はころころと笑った。
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