恋口の切りかた
「何が違う!」

円士郎が声を荒げて、冬馬が苦しそうに息をしながら口を動かした。


「姉上は……確かに家族からむごい仕打ちを受けましたが……それまでは、家族の愛情に包まれて育ったのでしょう?

兄上が仰る青文様──伊羽様のことは、私は何も存じませんが……それでも、やはり伊羽様も幼き頃には、誰かの愛情を受けて過ごした時期があったのではありませんか……?」


私は、あの村で過ごした温かな時間を思い出すと今でも溢れそうになる涙を必死にこらえた。


優しい緑色の瞳をした金髪の若者の過去について、詳しくは知らない。


けれど、いつか橋の上で旅芸人一座を眺めて懐かしいとこぼした青文は、雨を見つめる冬馬や夜叉之助のような目をしてはいなかった。

幼い頃に天涯孤独の身の上になったと言っていたけれど、ひょっとしたら、

それで厄介になっていたという──

そして彼自身が自分の盗賊仲間に仕立て上げたという──

その見せ物一座の中では、愛情を注いでくれた人たちがいたのかもしれない。


あるいは、天涯孤独の身となる前に、紅毛人だという母親の愛情を受けて育ったのかもしれなかった。


「──っだから何だ!?」

円士郎が、戸惑うように唇を噛みしめて、

「留玖や青文はそうかもしれねえ。
だが冬馬、お前はこの夜叉之助と同じ境遇にあったんだろうが!」

と言った。

「同じ目に遭いながら、
この男は十一年前に、お前とはまるで違う選択をした!」

「違うのです……」

冬馬は苦しそうに繰り返した。
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