恋口の切りかた
「ただ、俺はこいつを守ってやったのに──こいつはその俺を裏切ったということだ」

夜叉之助は氷雨のような視線を冬馬に浴びせた。


「飼い犬に手を噛まれるとはこのことだな。

目をかけてやった俺のもとを去り、再びまみえても何の役にも立たんばかりか、この俺に歯向かうとは──忌々しいと思うだけだ」


冬馬がつらそうに目を伏せて、

それから夜叉之助の冷たい双眸が私のほうを向いて、私は小さく震えた。


「留玖。お前も──

身を挺して守ってやったのに、己を裏切った家族や村の連中など皆殺しにしてしまえば良かったんだよ」


底冷えのする声で夜叉之助はそう言った。


「てめえ──!」

円士郎がまた声音に怒りを滲ませた。



ああ……そうなんだ。


本当は優しい心を持っているのに、この人は──

夜叉之助は──


そういう風に考えてしまうんだ……。


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