恋口の切りかた
「私のこの名前は、晴蔵様にいただいた大切な名前ですけれど」


私はおずおずと言った。

トウ丸という名に、未練はないと思った。
でも。

名前が変わった時、うれしさとともに──


やはり悲しかったのだ。


「少し、りつ様のお気持ちはわかる気がします」


それはたぶん、

刀丸という名前に、
大好きな漣太郎からもらった「刀」という字が入っていたから……

……というだけの理由ではないのだと思う。


「留玖殿も、つらい思いをしたんでありんしたな」
と言って、

りつ様は優しい目で私を見た。
< 229 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop