恋口の切りかた
「そして、わっちは晴蔵様に身請けされて、ここに来たのでありんす」

「ミウケっていうのは──」

「『身請け』は女郎屋に大金を払って、遊女を買い取ることでありんす」

「買い……取る?」


私は衝撃を受けて、りつ様の言葉をくり返した。

口にしてみるとそれは、
人ではなくて物のような言い方だと一層強く感じられた。


「そう。わっちは晴蔵様に買われて、妾となりんした」


りつ様はそのようにしめくくって──

ちょうど女中が灯りを持ってきた。



気がつけば、辺りはすっかり夕闇に包まれていた。

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