恋口の切りかた
りつ様は、父上に買われたのだと言った。

父上に買われて、
母上には疎まれて、
離れに一人で──

食事の時も、いつもりつ様は私たちと一緒の場所にはいない。
許されていないからだろう。

こんな風に──


──妾になる……というのは、



果たして幸せなことなのだろうか。



「あい」

にっこりと微笑して、りつ様はうなずいた。



「幸せでありんす」



私には……

そう答えたりつ様の気持ちが、わからなかった。




立ち上がった時、

ほの暗い行灯の光の中で、
花瓶に生けられた女郎花がちらりと目に入った。
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