恋口の切りかた
続けてバサバサという羽音が耳を打つ。

な──何だァ?

その場に乱入して来たのは一羽の鳥だった。


タカか!?


ここ、城の庭だぞ?

なんで、こんな所にタカが?

放し飼いにされているワケもねーし。


「え、円士郎殿!?」

廊下の連中がどよめく前で、

鋭いクチバシと爪を光らせ、タカは真っ直ぐ俺に向かって来て──


ひょい、と俺はかわす。


タカは、その先にいた高津図書に襲いかかった。


「やや、ややややっ!?」

髷の上に留まって、バサバサと翼を羽ばたかせるタカに
もみくちゃにされながら町奉行が悲鳴を上げる。

全員があっけにとられて眺めていると、


「ムサシ! おーい、ムサシ! どこ行った」


そんな声がして、


「おーい、馬鹿タカー! あほムサシー!
ったく、ざっけんなよ。
お前のせいで文句言われるのは俺なんだよ」


ブツブツ不平を漏らす声に続いて、

若い侍が一人
庭からぬっと姿を現した。
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