恋口の切りかた
タカが町奉行に襲いかかっているという
ナカナカ前衛的な
芝居じみた光景を目撃した若侍は、
一瞬凍りつき、
「ムサシ!」
と鋭く呼んだ。
暴れていたタカは、
すぐさま図書から離れて若者の腕に大人しく留まった。
「この者は……」
家老の爺さんが首を傾げて、
「例の鷹匠の秋山隼人です」
菊田が耳打ちした。
鷹匠というのは、鷹狩り(*)で使う殿様のタカを飼育管理して育てる役職だが、
例の──?
「お、おい……大丈夫かよ?」
俺は思わず素に戻って、町奉行のオッサンに声をかけ、
「き──きさま、秋山ッ!」
タカに襲われた図書は烈火の如く怒った表情で、
その秋山隼人とかいう若者の元にわしわしと歩み寄った。
「ああ、どうも申し訳ございませんねえ」
タカを腕に乗っけた秋山隼人は、ふてぶてしい態度で謝った。
年の頃なら、二十歳前後。
俺より少し上というところだろうか。
色白で、
どこか狐を思わせる、ツンと細く尖った目の男である。
「やや、なんだその態度は!」
「つうか、悪いのは私ではなくてですねえ、タカが……」
「この無礼者がァッ」
顔を赤くしたオッサンは、扇子を抜いて打ちかかり──
秋山は、それをさっと避けた。
(*鷹狩り:鳥のタカを使って狩りをするスポーツ。昔の武士のスポーツで、今で言えばゴルフみたいなもの)
ナカナカ前衛的な
芝居じみた光景を目撃した若侍は、
一瞬凍りつき、
「ムサシ!」
と鋭く呼んだ。
暴れていたタカは、
すぐさま図書から離れて若者の腕に大人しく留まった。
「この者は……」
家老の爺さんが首を傾げて、
「例の鷹匠の秋山隼人です」
菊田が耳打ちした。
鷹匠というのは、鷹狩り(*)で使う殿様のタカを飼育管理して育てる役職だが、
例の──?
「お、おい……大丈夫かよ?」
俺は思わず素に戻って、町奉行のオッサンに声をかけ、
「き──きさま、秋山ッ!」
タカに襲われた図書は烈火の如く怒った表情で、
その秋山隼人とかいう若者の元にわしわしと歩み寄った。
「ああ、どうも申し訳ございませんねえ」
タカを腕に乗っけた秋山隼人は、ふてぶてしい態度で謝った。
年の頃なら、二十歳前後。
俺より少し上というところだろうか。
色白で、
どこか狐を思わせる、ツンと細く尖った目の男である。
「やや、なんだその態度は!」
「つうか、悪いのは私ではなくてですねえ、タカが……」
「この無礼者がァッ」
顔を赤くしたオッサンは、扇子を抜いて打ちかかり──
秋山は、それをさっと避けた。
(*鷹狩り:鳥のタカを使って狩りをするスポーツ。昔の武士のスポーツで、今で言えばゴルフみたいなもの)