恋口の切りかた
「よろしい、よろしい」


菊田はくつくつと笑った。


「そうなさるがよろしかろう。
良かったな、秋山。
この結城円士郎殿が、無礼なタカの処分を引き受けて下さるそうだぞ、んん?」


丸く収まったのを見て、図書が安堵の息を漏らした。


心配いらねえっつの。

菊田はこういう男だ。

この世の全てに退屈しているような、厭世感たっぷりのこのオッサンは、
こんな対応をして見せると喜ぶのだ。

俺は幼い頃から何度か会って、その性質をよく知っている。


狐狸の魔窟──か。

確かに狐だの狸だのがウヨウヨしている。


「結城円士郎……」と、それこそ狐のような目を俺に向けて、秋山は小さく言った。


「先法家の放蕩馬鹿息子の……ああ、いやいや何でも」


……この野郎。

聞こえてるぞ。


俺がふてぶてしい鷹匠をぎろりと一睨みした時だった。



「騒がしいですね。何事か」



そんな言葉と共に──



正真正銘の魔窟のばけものが現れた。



「おお、伊羽殿」

廊下を歩いてくる覆面頭巾を認めて、好々爺の仕置家老が声をかけ、
菊田を除く取り巻きが頭を下げた。


伊羽青文。

俺は笑みを湛えて、この城代家老を見据えた。


今度こそ、この世界でまみえてやったぜ。
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