恋口の切りかた
「ほう? 無礼な物言いをなさる。
巷の噂に違わず、無頼の輩と大差ないようだ。
結城家の格も知れるというものですな」

「言ってくれる。無礼な物言いはどちらだ?」


俺と伊羽は睨み合い、


「円士郎殿、貴殿は我が大組の番頭となったのであろう。

組頭を兼務する私の下に入るというのがどういうことか、ようく考えておくのだな」


そんなセリフを残して、伊羽は廊下を去って行った。


「な、なんということを……」

真っ青な顔で高津図書がヘナヘナと座り込んだ。


完全停止している空気の中で、

「ほっほ、あの伊羽の若造に盾突く者がおるとは、気に入りましたぞ円士郎殿」

「さすが、結城殿のお子。久々に面白いものを見せてもらったわ」

平然と笑うのは藤岡と菊田だ。


どうやらこの中では、こいつら二人もクセモノっぽいな。


「しかしやや相手が悪い。時期も悪い」

菊田は、完全に面白がっている調子で言った。

「もうじき、殿の参勤交代で守役の父君晴蔵殿は江戸だ。
何かあっても、我らでは庇い切れませんぞ。

お覚悟はなさっておいたほうがよろしいでしょうな」


菊田は脅すような言葉を放って、

「いやいや、若いというのは怖い者知らずだのう」などと呟く好々爺につき従って去った。
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