恋口の切りかた
高津図書の話によると、

秋山隼人は勘定方の秋山左兵衛の子で、
元々は小納戸役(*)を務めていたらしいが、

前任の鷹匠が病で急逝した後、鷹匠に着任したらしい。


が、タカのしつけは上手くできず、手懐けることもままならず、

秋山に懐いていた唯一のタカというのが、あのムサシとかいう問題児で、


つまり、鷹匠になってからの仕事ぶりは駄目駄目の有名人。


菊田が「例の」と言ったのはそういう意味だったようだ。



一通り城内を見て回り、挨拶やら何やらを済ませて、

「ところで、町奉行の高津殿が何故私の案内役を?」

俺は気になっていたことを尋ねた。

「今は──世間を騒がせている怪事件でお忙しい身では?」

俺の言葉に、町奉行は「やや、私は今、非番の身ですので……」と言ってから、

キッカケを待っていたように、


「本音を申しますと、実はその怪事件のことで、円士郎様にご相談がありまして」


などと切り出した。


「その、噂では……円士郎様は町人の者ともつき合いが深いとのことですので」


町人の者……ね。

単刀直入に、渡世の者って言えよ。


「やや、噂は噂。先法家の御子息にこのような話、ご無礼とは重々承知しておりますが……」


図書は俺の顔色を窺いつつ、おっかなびっくりの様子だ。

このオッサン……本当にそのうち心労で倒れるんじゃねーか?



(*小納戸役:藩主の身の回りの世話をする小姓のお手伝い、雑務係)
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