恋口の切りかた
「確かに、噂どおり。私は渡世の者とも通じておりますが」

俺がにこやかにそう返すと、オッサンは目を白黒させてから、


「実は怪死した者というのが皆、町の侠客連中でしてな」

「銀治郎一家の者とか」

「……おお、そこまでご存じならば話は早い。
捜査を進めようにも、相手は血の気の多い渡世者。どうも、その……」


オイオイ。

まさか、武士がヤクザ相手にビビってんのか?
世も末だな。


俺が露骨にあきれた顔をすると、図書は慌てた。


「やや、及び腰になっているというワケではないのですがな、連中、仲間を殺したのは『白輝血』の奴らに違いないの一点張りで、どうも一向に捜査が……」

「ああ、そう言えば言ってたな、そんなこと」

「で、その白輝血の兵五郎一家を当たってみれば、今度は
濡れ衣だ、
言いがかりだ、
あんな真似が人間にできるのか、
まずはそこを説明してからにしろと、
まあ、こんな具合で……奉行所としましても……」

お手上げってことか。

「ここは、その……円士郎様に何かご存じのことがないかと思った次第で」

俺はあの時、橋のたもとでの連中の会話を思い出した。

「……私が知っている情報ならありますが」

「なんと!」


遊水は──銀治郎から聞けと言った。

つまりこの情報は
露見しても、あいつにとって都合の悪いものというワケではなさそうだ。


「『ヌエの大親分』です」
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