恋口の切りかた
「無論」


伊羽は、憔悴しきった声で頷いた。


「私には寝耳に水だ」

「となると──」


一番に考えられるのは、

その五年前の焼死事件の詳細を知り、
こいつが兄弟を殺して伊羽家を乗っ取ったことを知る者が

脅しをかけてきている、という可能性だが。


「心当たりは?」

「無いな。脅しが目的にしては──これまで私の所に何の接触もないことも妙だ。

そもそもあれは、

誰にでも簡単に行えるような手法ではない」


手法──。


俺は、大勢の眼前で突如として炎に包まれた喜三太を思い出した。

城中であることを意識しながら、慎重に言葉を選んで



ずっと気になって仕方がなかった疑問を、口に乗せる。



「どうやったら──できるんだ?」



伊羽は無言で、懐から丁寧に畳んだ紙を取り出して俺の前に置いた。


俺は畳まれた紙を取り上げ、中を開く。




『天照』


そして、


『月読』




という二つの言葉が書かれていた。

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