恋口の切りかた
伊羽に話をつけ、奥の間を後にして、
城中を歩きながら考える。

「天照」に「月読」か。

読み方はアマテラス、ツクヨミだろう。

天照大神(あまてらすおおみかみ)と、月読尊(つくよみのみこと)を示しているのだろうか。


どちらも古事記や日本書紀に書かれた神代(かみよ)の八百万(やおよろず)の神である。


それに、「人形斎」。

何者だ? 単純にこいつの仕業、ってことじゃねーのか?



考えを巡らせつつ、御鷹部屋(*)に向かって──


「よう。例のタカ、引き取りに来たぜ」


鷹部屋にいた鷹匠、秋山隼人に
カンペキに素に戻った声をかけると、


「げえ!? 結城の……マジかよ……」


俺を見た秋山は露骨に狐目を歪めて顔をしかめた。


「いや、なんつうか、こいつ阿呆で馬鹿で死んだほうが清々するタカだけど、だけど何も殺さなくても、とか思うんスけど……ねえ」

秋山は相変わらずふてぶてしいというか、人を食ったような態度で、
自分の腕に乗せていたタカを庇っているのか何なのかわからない発言をした。

「誰が殺すって?」

俺は鼻を鳴らした。

「はあ? だってさっきあんた、処分するとか仰いませんでしたっけ?」

「おう、言ったぜ」

「言ってんじゃねーかよ……」

「処分する、とは言ったが殺すとは言ってねえ」

「あ?」


キョトン、とタカと同じように首を傾げる秋山に、


「要はこの城内からそのタカがいなくなればいいんだろ? お前んち、タカ飼える?」

「……いやいや、うちは組屋敷(*)なんで、さすがにタカは……有り得ないでしょ」

「なら、うちで飼うから。お前、世話しに来いよ」

「ハイ?」


秋山は細い目を丸くした。



(*御鷹部屋:鷹匠が鷹を飼育管理・調教する場所)
(*組屋敷:藩から組にまとめて与えられた屋敷。公務員住宅みたいなもの)
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