恋口の切りかた
要するにこの町方連中も、ここに来た目的は俺と同じ。

俺があの町奉行の高津図書に「ヌエの大親分」についての話をしたもんだから、
探って来いとこいつらが差し向けられたワケだ。

二本差しでこんな馬鹿正直に
真っ正面から聞きにくる馬鹿があるかよ……。


「おらおら、帰れ帰れ!」

若い子分の一人が手を振りながら近づいて凄み、



瞬間、与力の手が動いた。



抜いて、
斬りつけ、
鞘に納める。



──速い。



「あ……?」

ポカンとしたままの子分の帯だけが切れ、
着物がはだけてサラシとフンドシが丸見えになった。

「ひ、ひいい……」

真っ青になって俺のそばまで後退してくる子分。

おそらくこいつには、
与力の手元で何かがひるがえったくらいにしか見えていないだろう。

今の抜刀から納刀までの動きを目で追えた者が、この場にどれだけいるのか。

「え、円の旦那ァ……」

子分が情けない声を上げ、

「斬り捨てられたくなければ大人しく下がっていろ」

与力が俺を見て鼻を鳴らした。


くくく……面白ェ。

そういう真似なら俺にも──


俺は鯉口を切り、

「ぬ!?」
「こやつ!?」

色めき立つ同心たちの目の前で、

素早く刀を動かす。


パサリ、と

帯を切られて俺のそばにいた子分のフンドシが


切れて下に落ちた。
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