恋口の切りかた
「聞きたいのは、鵺の大親分のことでやしょ?」

湯飲みを口に運びながら、銀治郎は坪庭に視線を送り、そう言った。


「まずね、白輝血ってのは──カガチのことです」


店先ではすぱすぱと煙管をふかしている銀治郎だが、
何故かこの座敷では煙草を吸わない。

こだわりでもあるのか、いつもここで傾けるのは湯飲みだ。


「円の旦那とおつるぎ様はカガチって何のことだかわかりやすか?」


夕刻が迫り、薄暗い座敷には、
俺と留玖が銀治郎と向かい合って座っている。


問われて、留玖と顔を見合わせる。


「カガチっていうと──」


俺は赤い実の植物を思い浮かべた。


「ホオズキのことだろ?」

「ああ、いやいや。そりゃ『赤輝血』でさ。

もっとも、兵五郎の野郎は最近、赤輝血と名乗りたがってるみてえでやすがね。
白かろうが赤かろうが、あいつが『カガチ』だってことは変わるめえに……」


そう言や、遊水もそんなことを言っていたな。


「カガチってのはね、ホラ、
ヤマカガチとかヤマカガシとか言うでやしょ」


と、貸元は俺と留玖ににじり寄り、声を潜めた。





「つまり、蛇のことでやすよ」
< 803 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop