恋口の切りかた
しかしやや腑に落ちない。

「銀治郎親分、あんたたち『虎鶫』は──
大親分が死んで、ここらの縄張りを掌握しようとは思わなかったのか?」

銀治郎は少し迷うようにしてから、また声を潜めて言った。

「円の旦那にゃあうちの用心棒も頼んでる手前、申しますがね、

鵺は死んでやせん」

「あァ? 今、死んだって言ったばかりじゃねえか」

「先代の大親分は死にやした。

しかし跡目を継いだ二代目の鵺がいるんで」


銀治郎の話によると、

鵺の大親分というのは、元々
上方のほうを荒らし回っていた有名な盗賊の一味だったそうで、

盗賊だった頃から正体不明の鵺と恐れられていたらしい。


それが隠居して一味を抜け、この城下で一家を興したのが始まりなのだそうだ。


一味を抜ける時、鵺の大親分には子供がいた。


その子供も一緒に一味を抜け、大親分の世話をしながらこの町に潜んでいたらしいが

去年の末に先代が死んですぐに、
その子供が跡目を継いで今の鵺の大親分になったのだそうだ。


「しかし、白輝血の奴らは、先代への恩も忘れて
その二代目を認めようとしなかった。

正体不明の人間の尾になるなんざもうまっぴらだと言って、
任侠の仁義も捨ててこの始末だ」

「ふん、それで今の大親分に従おうとしてる虎鶫と対立してんのか」


それにしてもいまいち理解し難い話だった。

そんなに姿形の定まらない親分をどうして信用して、これまでこいつらがまとまっていたのか。

白輝血の行動のほうがもっともな気がする。


「鵺の大親分には、盗賊の一味を一緒に抜けた腹心がいやしてね」

と、銀治郎は説明した。
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