恋口の切りかた
鬼之介は血色の悪い青い顔を恐怖に歪めて、すがるような視線を鳥英に向けた。


「蘭学に通じているなら、西洋の書物の中に既にあるか?

空気中では、暗闇で青白い光を発する物質の記述が」


「君の言っていることはよくわからないが……暗闇で光る物質だな」


鳥英は小首を傾げて、すぐには思いつかないが、調べてみようと答えた。


「蘭語での名前はわかるかね?」

鳥英の問いに、鬼之介は少しためらう様子を見せてから、





「いや……ただ、ボクが出会った男は、

いずれこの島国では



『燐』──『黄燐』と呼ばれることになる物質だと語った」





そう答えた。


「いずれ、強い毒性が問題になる物質だと」


リンという物質……か。

俺には聞き覚えのない名前だった。


「いずれ?」

俺は苦笑した。

「まるで先の世を見てきたようなセリフだな」

「そうさ」

鬼之介は怯えた表情のままだった。


「そいつはボクに、自分は未来を知っているのだと言っていた」

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