恋口の切りかた
「なにィ!?」


目を剥いた俺に、鳥英は
「去年の暮れくらいかな」と思い出すようにしながら語った。


「こう、顔に白い陶器の狐面を被っていてな、終始外すことがなくて不気味だった。何を言っているのか聞き取りづらくてかなわなかったしな」

「狐面? そんなもの、昔はつけてなかったと思うがな」

鬼之介が不思議そうに首を傾げた。


俺は身を乗り出して鳥英を見た。

「そいつ、何しに来たんだ?」

「私に絵の依頼をしたいと言ってきた」

「絵だと?」

鳥英は頷いて、

「初めは、『そんなもの』実物を見なくては描けないと断ったのだがね。

報酬が破格だったのと、その男のあまりの熱心さに根負けして──

結局、たまたま虹庵先生が『それ』をさばく機会があると言うから、
コッソリ協力してもらって、その場に立ち会って──描いたよ」


俺は眉根を寄せて鳥英を見つめた。




鳥英は、「その男はね」と言った。




「人間の女の体の中身を、詳細に描いてくれと言ってきたのだよ」
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