恋口の切りかた
鳥英の長屋を後にして、

橋のたもとの芝居小屋へと向かいながら


「さっきの話、どう思う?」


鬼之介が険しい顔で言った。


「どうって?」

「女の体の中身だぞ!?
どう考えても、前にあの男がボクを犯人だと疑った事件と関係が……」

「やめろよ、留玖の前だぞ」


鳥英の話を聞いてからずっと、真っ青な顔をしている少女を気遣って、

俺は無神経な鬼之介を睨んだ。


「また留玖が一人で眠れなくなったらどうするんだよ」

「は? どういう意味だ?」

「ああ……いやいや、何でもねえけど」


とにかく、ここでその話はやめろと俺は鬼之介に念を押した。

鬼之介も留玖の様子を見て、「うむ、まあ……これが普通のおなごの反応というものなのだろうな」と言った。


「佐野鳥英は──さすがはあいつの女だな」


この際、別に遊水は関係ないと思うが。


腑分けの真似事どころか、
本当に腑分け現場に居合わせて冷静にその後で絵を描くとは……

確かに普通の女じゃねえよな、と俺は苦笑する。

初めてそんな現場に居合わせたら、男でも卒倒しそうなものだ。


鳥英は、もともと魚やカエルや鳥などをさばいて絵を描いていたから、臓腑を見慣れていた、ということはあるのだろうが……。
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