恋口の切りかた
気になるのは、人形斎が鳥英に絵の依頼をしに来た時期だ。


去年の暮れ。

これは、銀治郎が言っていた──


「鵺の大親分が死んだ時期」と一致する。


偶然ではないだろう。

そしてその後、巷では
遊水が銀治郎から隠蔽を依頼された、遊女の連続殺害が起き、

更にそれに続いて、この焼死事件が起きた──


これらは皆、繋がっていそうだ。



鈴乃森座の前に着くと、連日の芝居の興行で辺りは賑わっていた。

今やっているのは、カラクリを用いた舞台の仕掛けが凝った芝居で、人気女形の鈴乃森与一が出ていることもあり、近隣の宿場からも見に来る見物客がいて結構盛況なようだ。


この町の芝居小屋は、

何代か昔の殿様が参勤で江戸に行った折り、江戸四座に影響を受けて
江戸から宮地芝居の役者を連れ帰り、城下にも常設の芝居小屋を作ったのが始まりらしい。

鈴乃森座は、昔は近隣の町や村を流れながら興行を行っていた旅の一座で、

俺が子供の頃はまだ、祭りの時などに神社の境内で芝居をやっていた。


それが、七、八年くらい前に殿様に気に入られ、

城下に芝居小屋を構えることを許されて、今では元々城下にあった赤桐座と並ぶ芝居小屋になっている。



「おやおや、これは虎鶫のところの御武家のお坊ちゃま」

留玖と鬼之介を連れて中に入ろうとすると、
ちょうど芝居小屋から出てきた見覚えのある男と鉢合わせになった。


爬虫類のような鋭い目つき、派手な着物。
周囲には四、五人の子分たちをはべらせている。


三十路前後の若い貸元、

白輝血の兵五郎だった。
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