恋口の切りかた
「留玖!」

円士郎の叫びを聞きながら、


伝九郎と名乗った青年が抜刀すると同時に無意識に刀を抜いていた私は、

相手との膂力の差を見極めて、受けずに剣撃を流した。



切っ先が離れて──


「ほう?」

青年はにたついた。

「小僧。お前、ただ者じゃないな」


私はごくりと生唾を飲み込む。


殺気も何もなかった。


少し前に私と円士郎が考え出した「村雨」という奇襲技に似ていたけれど、

伝九郎という青年の今の剣は不意打ちと言うよりも──


呼吸するかのような自然さだった。


裂帛の気合いとか、動作に移るための構えとか、そんなものがいっさい感じられない。

白輝血の兵五郎が「用心棒の先生」と言っていたから、そこらのゴロツキとは違って腕に覚えがある人なのは当然だろうけれど──

こんな動きができるなんてこの人、何かの流派をちゃんと納めた達人なんじゃないのかな。


なんて思っていたら、


「いやいやいや……目が合った瞬間、殺されるかと思うたわ。
このわしが思わず刀を『抜かされる』とはな」

伝九郎は私を見たまま、そんなことを言った。

え……?


「怖いねえ。今にも刀を抜いて打ちかかってきそうな、嬉々とした『愉しそうな』目であったぞ。
今もそうして笑っておるとは……その齢で、よほど斬り合いが好きで好きで堪らぬと見える。くわばらくわばら、末恐ろしや」


笑っている?

今も?


私はポカンと伝九郎を見つめた。
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