恋口の切りかた
「例の……長兄?」

円士郎が顔をしかめた。

悪さをしている円士郎は「例の」と呼ばれること自体は珍しくないが、結城家の長兄という言い方は何だか妙だった。


「紅傘……」


私は凄く嫌なものが体の中を這い回り始めたのを感じながら、

伝九郎が口にした──初めて耳にする単語を反芻した。


「おやおや、自分が斬った者の名も知らなかったのかな。

『紅傘』の一味はそれ、五年ほど前に白浪六人斬りでお嬢ちゃんが殺した連中のことよ」


伝九郎はやっぱりニヤニヤしたまま、そう言った。



「結城のおつるぎ様、お嬢ちゃんはわしらの世界じゃあ有名人なんだよ」



しらなみ……六人斬り。


しらなみ……
白浪って言うのは……


私は円士郎を見上げた。

「白浪って、なに?」


円士郎が、悲痛な──苦しそうな色を瞳に湛えて私を見下ろして、


低く囁いた。


「盗賊のことだ」

< 865 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop