恋口の切りかた
円士郎は、にやつく浪人を睨んだ。

「シンコウの伝九郎とか言ったな。てめえ、何者だ?」

「ははは、さてねえ。
ふむ、しかしお前たちが結城家の連中だとすると……」

伝九郎はにへらにへらと緩い表情のまま、つと視線を鬼之介に移した。


「こちらの男は何かのう?」


「──鬼之介ッ」

円士郎が警告の声を発して──

伝九郎は既に、無防備にやりとりを眺めていた鬼之介に打ちかかっていた。


鬼之介は、まだ怪我が治りきっていなくて、

よりによって今日は、木の杖を一本持っているだけで刀も差していない着流し姿だった。




キン、という


木らしからぬ澄みきった硬質の音を立てて、鬼之介の手にした杖が伝九郎の剣を受け止めた。


「仕込みか……」

伝九郎が、やっぱりニタニタしたまま呟いた。


「ふふ、お前さんもやるようだのう。
もっとも、今は随分と具合が悪そうだが」


よく見ると、杖の途中に切れ目が入っていて、
そこから三寸ばかり引き出した中の鋼の輝きで、鬼之介は伝九郎の刀を受けていた。


ただの杖かと思っていたら、鬼之介が手にしていたのは仕込み刀だったらしい。


刀を合わせたまま、本調子でない鬼之介がうめき、よろめいた。


「この野郎!」

横手から円士郎が刀を振り下ろして、伝九郎が大きく退いた。

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