恋口の切りかた
あの大晦日の晩、雪の中で私は一人だったけれど、
円士郎はずっとそばにいてくれた気がする。

この人だけは、
いつも私を理解して、過去を共有してくれる。


私はそう思って、




胸の辺りに広がっていた、
黒くて冷たい──汚れた雪の塊のようなものが、すうっと解けていった。




「もう、大丈夫……」

私は円士郎を見上げて微笑んだ。

今度は、自然に笑うことができた。


円士郎が「そっか」と言って、

でもまだ、心配そうな目で私を見つめて

私の頭をぽんぽんと優しく叩いた。


それから円士郎は体を離して、

「シンコウの伝九郎とか言ったな……あいつ、何者なんだ」

と、人混みの向こうを睨みつけた。


「おい……」


声がして振り向くと、

鬼之介が何か──物凄く狼狽した表情で私と円士郎に視線を注いでいた。
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