恋口の切りかた
しゃん、しゃん、べべん……と、耳に快い三味線の音が人気のない舞台に響いている。


「蚕糸さん、あんたに尋ねたいことがあるってお人だよ」


与一は、舞台の下座にある黒簾に一人座して静かに三味線を奏でていた男に声をかけた。


ぴたりと三味線の音が止まる。


「おやおや、今日はやたらと私にお客が多い日ですね。今度はどなたでしょう」


丁寧な口調で言って、まるで目が見えているかのように私たちの方を振り返ったのは、


年の頃なら三十代半ばというところ、

柔和な好人物といった印象を受ける優しげな顔つきの男だった。



座頭のように坊主頭ではなく、きちんと髷を結ってこざっぱりしたなりをしている。

けれどその両目は、硬く閉じられていた。
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