恋口の切りかた
「安心しな。今度は渡世人じゃあないよ。ちゃんとした御武家の若様たちさ」

与一がそう言って、

「御武家様がこのような盲人に何のご用がわかりませんが……白蚕糸と申します」

盲目の三味線弾きは居ずまいを正して、こちらに向かって頭を下げた。

やっぱり目が見えているのではないだろうかと疑いたくなるような動作だった。

「ツクモサンシ?」

私が首を傾げて聞き返すと、

「はい。白と書いてツクモと読みます。百から一つ足りない白髪頭の九十九髪(つくもがみ)の──白でございます」

「白蚕糸さん……」

と、私は漢字を思い浮かべながら口にした。

「俺は結城円士郎だ」

円士郎が名乗って、

「今のは円士郎様の妹君の──結城のおつるぎ様だよ」

与一が私を紹介してくれた。
それから与一は鬼之介を見て首を傾げた。

「ええっと、そう言えばこちらのお侍様は──」

「ボクは宮川鬼之介新三郎三太九郎太郎五郎衛門之進だ」

「おや! って言うと、カラクリ鬼之介さんかえ?」

与一が目を丸くした。

「円士郎様のご友人だったとはね。そりゃ是非、機会があればうちの舞台カラクリも作っていただきたいもんだねえ」

「フン、ボクには見せ物のカラクリを作るシュミはない!」

人気女形の言葉にも、鬼之介はにべもなく一蹴した。

「あーダメだダメだ、与一」

円士郎が苦笑しながら言う。

「こいつは、武芸者でな。ほとんど武器専門の発明家だ」

おや残念、と与一は肩をすくめた。


「それで、御武家様方が私めにご用というのは?」

蚕糸が尋ねた。
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