恋口の切りかた
【円】
銀治郎が何の用でこの白蚕糸という盲目の三味線弾きを尋ねて来ているのかも気になったが……
まずは、やはり狐の仕掛け人形についてだ。
ニコニコと人の良さそうな笑顔を俺たちに向けているこの愛想の良い三味線弾きに、俺は与一にしたのと同じ説明をして、
昔の人形を作っていたのが誰だかわかるかと尋ねると──
蚕糸の顔から、笑いが消えた。
……何だ?
俺は訝って──
「それは、人形斎さんですね」
と、蚕糸は即答した。
──やはり。
そう思うと共に、俺の中ではこの三味線弾きに対する疑念が頭をもたげる。
十年余りも昔のことなのに、普通は聞かれてこんなにすぐに答えられるものだろうか。
「確かか?」
「間違いありません。私は鈴乃森座の裏方には昔から通じておりましたが、あの頃の仕掛け人形は、すべて人形斎なるお人の手によるもの」
俺の問いに対して、再びにこやかな微笑を浮かべた蚕糸はそう答えた。
成る程な。
そういうことならば、記憶に間違いはなさそうだ。
「しかし、そのご様子ですと……結城家の若様は、人形斎さんをご存じなのですかねえ」
蚕糸は固く閉じた両の目を俺にぴたりと合わせて、こちらの腹の中を見通すかのようなセリフを口にした。
「ふふ、まるで初めから、その仕掛け人形を手がけたのが彼だという『確信があって』お尋ねになったかのようですが」
こいつ──!?
「そりゃ、いったいどういうことだい!?」
蚕糸の言葉に、驚いた様子で大声を上げたのは人気女形の与一だった。