恋口の切りかた
「ちょ、ちょいと蚕糸さん……!」

与一が慌てた。

「円士郎様はいつも芝居を見に来て下さるお客だよ。そんな言い方しなくたって……」

「つまりてめえは、私情じゃなければ話を聞かせるってことか?」

俺は蚕糸の閉じられたままの目を見据えた。

「俺は、城中の『ある御方』からこの事件について調べるよう命じられてる。
まだ正式な沙汰はないが、来月の頭にでも役方連中と共に捜査に加わることになるだろう」

「え……!? ちょいと! 円士郎様まで、何を言い出すのさ?」

与一が俺の顔を覗き込んでくるが、無視。

「これで満足か? 兵五郎はあんたのところに何の話をしに来てるんだ?」

「同じ事ですよ」

蚕糸はにこにこと、余裕の表情を崩さない。

「まだ来月じゃありません。つまり今は、ただの私情による興味本位の詮索と何の違いもないでしょう。
正式なお取り調べでいらっしゃればまた──違った返答を致しますよ、若様」

蚕糸は笑んだまま「それとも」と言って、留玖や鬼之介のほうにも首を動かし、


「円士郎様やおつるぎ様のお腰のものや、鬼之介様のお手にある『仕込み刀』を使って、喋らねば斬るとこの盲人を脅してみますか?」


鬼之介と留玖が、ぎょっとしたように蚕糸の見えない目に視線をやった。


こいつ、本当に目が──


──いや、見えていても鬼之介の仕込み杖まではわからないはず。
やはり音で……そこまでわかるのか?


「面白ェ」

俺はニヤリと笑った。

「だったら出直してきてやるよ。違った返答とやら、忘れんなよ」
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