恋口の切りかた
「ああ、もちろんあるさ」

「ふむ。ボクも発明家の端くれ。そいつは是非一目見せてもらってもいいか?」

「そういうのは歓迎だね」

与一はようやく笑顔に戻って、鬼之介を連れて舞台裏に向かった。


俺もその後ろに続こうとして、

ふと、留玖の姿が見当たらないのに気がついた。


見回すと、留玖は平土間に降りていて
客が落としていった煙管か何かを拾い上げているところだった。

一度、冬馬と風佳を連れて来た時や、
こういう場所での金使いが派手な遊水と来る時などは桟敷席からの見物もしたし、たまには上客の扱いで金を落として行っているのだが、

普段、俺は平土間や高土間の活気のある空気が好きで、もっぱら鼠木戸を潜って今留玖が立っている辺りからの見物だ。


留玖は拾い上げた煙管を手にして、とことこ歩いてこちらに戻ってきて──

何かにつまずいた。


前のめりに倒れそうになり、手にした煙管がすっぽ抜ける。


留玖の手を放れた煙管は、

ひゅるるんと、
回転しながら
真っ直ぐに
勢いよく盲目の三味線弾きのほうへと飛んでいき──



──ん!? ワザとか!?



狙いすました軌跡を描いて飛ぶ煙管を見て俺がそう思って、


ぱしんと、

人差し指と中指で挟んで

白蚕糸はそれを受け止めた。
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