恋口の切りかた
鬼之介は興味深そうに舞台の仕掛けを色々見て回って、

結局、今日のところはそれで引き上げることになった。


「おい、さっきの話は本当か?」

鈴乃森座を後にしながら、鬼之介は俺に訊いた。

「来月から貴様が怪事件の捜査に加わるという話だ」

「ああ。本当だ」

「だったら──例の狐の屋台とやら、もしも捕まえることができたらボクに見せろ」

鬼之介は自信に満ちた顔で言った。

「人形斎の手によるものかどうか、ボクなら調べられる」

「お前、ひょっとして芝居小屋で、そのために人形斎の作った仕掛けを見てたのか?」

「当たり前だ」

「へえ」


さっき蚕糸に煙管をぶつけようとした留玖と言い──やるな、こいつら。

俺は感心して、一つの決心をした。


「その捜査のことだが、俺には直接使える人間が──まあ一人は予約済みだが──あまりいねえ。そこで、だ」

俺は杖を突きながら歩いている鬼之介と、可愛い顔できょとんと俺を見上げている留玖とに笑いかけた。

「お前ら二人にも、色々と手伝ってもらいてえんだが、どうだ?」


留玖は少しはにかむようにほっぺたを赤くして、

「私も、エンの役に立てるのかな?」

と訊いてきた。


「お……おう」

「だったら、いいよ。手伝ってあげる」


留玖はそう言ってこくん、と頷いて──




──こいつ意図的にやってんじゃねェだろうな!?


俺はその場で理性が飛びそうになった。

無意識だとしたら、相変わらず殺傷力のありすぎる男殺しっぷりだぞ留玖。
俺限定かもしれないが。
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