恋口の切りかた
「おのれェ……」

鬼之介が何やら憎悪の瞳を俺に向け、

「一つ訊くが」と、真面目な顔になって言った。


「貴様が先程言っていた、貴様に捜査を命じた『ある御方』というのは──伊羽青文か?」


俺は横目で一瞬だけ鬼之介に視線を向けて、

「そうだ」

と、頷いた。


「……解せんな。どうしてそんな命が貴様に下せる? 番頭は城詰めだ。番方の役目についた先法家の嫡男に役方の仕事の手伝いをさせるなどという非礼、いくら城代家老でも──」

「着任当日に俺が重臣たちの面前で御家老本人に無礼を働いた」

「──ハァッ!?」

「親父が殿様と一緒に江戸に発つのを見計らって、その制裁が俺に下される──とまあ、あいつのそういう筋書きに乗ってやったんだよ」

「馬鹿者が! 貴様は阿呆だろ! 絶対阿呆だ!」


鬼之介は往来の真ん中でひとしきりわめいて、

チッと舌打ちした。
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