恋口の切りかた
留玖と俺が狐の屋台に出くわした晩、月読による火傷を負った町同心の片瀬六造は、

程なくして、やはりこれまでの被害者と同様の怪死を遂げた。


宗助に調べさせると、片瀬は銀治郎のところの末端の子分連中を目明かしとして使っていた。
つまり、これも虎鶫と接点があったために狙われたと考えるのが妥当だった。


ここにきて役人にまで被害者が出たということは、
武士だろうが渡世人だろうが、連中は虎鶫に関わった者なら狙うということの表れであり、


そうなると──


「用心したほうがいい。
武士の身分にある者の中で、今一番狙われる可能性があるのは──円士郎様ということになる」


宗助は能面のような顔に渋い表情を作って言った。


まさしくその通りだった。

用心棒なんかやっちまってるからな。


まあ、月読のほうは狐の屋台に行き遭った時点で警戒できるかもしれないが、天照で狙われた場合、今のところ直前にそれを知る方法すらない。

考えられる対策と言えば、晴れた日に出歩かないようにすることくらいだが──そんな風にビクついて過ごすのは俺の性に全く合わなかった。

鈴乃森座から戻ってすぐに調べるよう宗助に頼んだ別件について尋ねると、

「白蚕糸という盲目の三味線弾きについては今のところ、鈴乃森座の結成当初からの座員であるということがわかっただけで、特に不審な点は見当たらない。
伝九郎という浪人については──調べるのに時間がかかりそうだ」

宗助はそんなことを言った。

「ふうん。蚕糸って奴は一応、名前どおり白ってことか」

俺は腑に落ちない気分で尋ねた。

「伝九郎の調査に時間がかかるってのは?」

「そいつが裏の世界の人間だからだ」

宗助はそう答えて、「円士郎様」と言った。

「これはその白蚕糸という男についても言えることだ。もしも、白蚕糸なる三味線弾きもまた裏の世界に何か関わっている人間ならば──俺が普通に調べても何も出てこない」
< 889 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop