恋口の切りかた
殿様が参勤交代で江戸へと発つ日がやってきて、
親父殿は俺たち兄弟を集めて「留守の間のことは任せたぞ」と言い、

「それから円士郎、約束を忘れてはいまいな。一年後を楽しみにしておるぞ」

そんな言葉を言い置いて、親父殿は出立して行った。


この時は親父殿も俺も、

親父殿の江戸詰が終わる一年後ではなく、

これより半年の後
あんな形で再会することになるとは


想像もしていなかった。



予定どおり、俺は伊羽から正式に役方の捜査に加わるよう言い渡され──

そしてもう一人、時を同じくして上からの沙汰が下った人間がいた。



「どういうことだ、円士郎様よォ!」

その日、タカの世話をしに来た秋山隼人は、俺の姿を認めるなり狐のような顔を引きつらせて食ってかかった。


「おう、どうした隼人」

「どうしたじゃあないでしょうよ!」


何の話か予想がついていた俺が、にたつきながら声をかけると、隼人は完全に動転した様子で怒鳴った。


「非番が明けて御鷹部屋に行ったら、いきなり今日からもう城には来なくていいって言われたぞ!」

「ほほう」

「どういうことかと周りに聞いたら、正式な御沙汰は明日にでも下される。円士郎様が秋山隼人は鷹匠には向いていないと御家老衆に進言してお前は城詰めから外される──って何だそりゃ!?
俺は何も聞いてないぞ!」
< 893 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop