恋口の切りかた
「えー? 一応言っておいたぜ」

「はあ!? いつ!?」


留玖にはなぜだかよく懐いて、今も彼女に背中をなでなでされて大人しく目を瞑っている白い羽根のタカに俺は視線を注いだ。


「ムサシを引き取りに行った時、言ったろ。御鷹部屋のタカとは別れを済ませとけってな」

「はああ!? 冗談じゃねえぞ、勝手に何してくれてんだアンタ! 俺が何をした!?」

「いや~、勝手に悪かったな。だから、ムサシのことは詫びだと思ってくれって言っといたじゃねえか」


全く悪びれたところのない俺の態度に、「有り得ねー」と言って隼人はうずくまり──


そして翌日。


「どういうことだ……円士郎様よォ……」

再び屋敷を訪れた隼人は俺を見るなり、
前日と同様の言葉を、今度はボーゼンと呟いた。

「いきなり御家老に呼ばれて、円士郎様の抜擢で今日からお前は大組の士分に取り立てられる。以降は円士郎様の下で番方の役目に就けと……そう言われたぞ……」

「おう、よろしく頼むわ」


細い目を点のようにして俺を見つめている秋山隼人に、


「初対面であんたに斬りつけた『村雨』って技な、うちの門下生で難なく避けられたのは留玖と、あと鬼之介って奴だけだ。
あんたの剣の腕は役方に置いとくにはもったいねえと思ってな。

巷を騒がせてる怪事件の捜査、俺と一緒にあんたにも助役として加わってもらうことにした」


俺はそう告げて、


「あ……有り得ねー」


隼人はやっぱり頭を抱えてうずくまったのだった。
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