恋口の切りかた
「な──何だよ、そりゃ……」

隼人の顔に引きつった笑いが浮かんだ。

「隼人、あんた初めっから留玖を組み伏せて腕力の違いを教えるつもり『だけ』だったろ」

円士郎が、投げ捨てられた私と隼人の木刀を拾い上げながら言った。

「留玖を殺すつもりなら──刀を捨てたら駄目だろうが」

「な……何を言ってんだ?」

「留玖を殺す気がない相手なら、留玖は殺せるんだよ!」


円士郎が怒鳴って、

両手で首筋と両目を狙ったままの私を、隼人はぼう然と見下ろした。


「私の両手は自由なままでした。本当に動きを封じるなら、組み伏せた後に腕も押さえつけないと……」

私はそう言って、両手を下ろした。

「ふん。まあ、下手なことやんなくて正解だったと思うぜ?」

私の言葉を聞いた円士郎が鼻を鳴らした。

「前に、俺が片手で留玖の両手を押さえつけた時は、俺がもう片方の手で何かする前に、留玖に解かれて直で指を狙われて骨折られたし、その次にとりあえず両手で留玖の両腕を押さえつけた時には鼻面に思い切り頭突き食らわされた……」

円士郎の言葉を聞きながら、隼人は目を見開いたまま、私を黙って見つめていた。



私がこれまでこの勝負を何百回、何千回と繰り返してきた相手は、女の子ではなくて──私よりも体格で圧倒的に勝る円士郎だ。


男女の腕力の違いは、円士郎が真っ先に目をつけて戦法に利用してきたことであり、

私が真っ先に対抗策を何十通り、何百通りも考え出す必要に駆られたことだった。


隼人が、私の木刀を片手で受け止めたことも、私を組み伏せたことも、円士郎との勝負では日常的に起こっていた。
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