恋口の切りかた
「へ?」

「ククク……いやいや、実は恥ずかしながら俺は今ちょうど独り身でしてねえ」

きょとんと首を傾げる私に、隼人は可笑しそうに言った。
円士郎が、少し神妙な表情になる。

「確か病でご新造を亡くしてたんだっけな」

「え……?」

今度は私が青くなった。

「ご、ごめんなさい。私、何も知らずに」

「ああ、いえいえ。違いますって! 円士郎様、おつるぎ様に変な気使わせないでくださいよ。
病で先立たれたんじゃなくって、妻には逃げられたんですよ。俺が鷹匠の役目もまともに果たせないから愛想を尽かされちゃいまして」

隼人はそんな風におどけて、

「あ? けどよ……」

円士郎が変な顔をした。

このとき隼人は、どこかつかみ所のない笑いを湛えていて──それは相手の動きを読み切ってひょいひょいと剣をかわす隼人の動きのように、他人を決して寄せ付けないものに見えた。

隼人はその達観とも諦観ともつかない笑いを浮かべたまま、私と円士郎をジロジロと見比べて、


「しっかし、あんた──妹に、自分のことを『エン』って呼ばせてるんだな」


円士郎にそう言った。
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