恋口の切りかた
ぎくりとしたように、円士郎が隼人を睨んだ。


「……だったらなんだ」

「いや、ベツに」


私も何だか落ち着かない気分になってしまって、急いで説明した。


「あ、あの……私たちは私がここに養子にくる前からの幼なじみなので、だから『兄上』と呼ぶのが何だか気恥ずかしいというか、どうしても慣れなくて……」


他の人の前では「兄上」と呼ぶようにずっと気をつけていたはずなのに、いつの間にか忘れていて、ここのところ人前でも私は彼を「エン」と呼んで砕けた口調で話しかけてしまっていた。


私の説明を聞いた隼人は、「幼なじみね……」と、ボソリと低く呟いた。


「おう、あんたこの後ヒマだろ。日も暮れたし少しつき合えよ」

隼人を値踏みするかのように見つめていた円士郎は、何を思ったのかそんな誘いを口にした。
この誘い方は、お酒っぽかった。

「はあ? いや、日も暮れたって……『月読』とか言うやつは夜の焼死事件を起こしてるんだろ。捜査はよ?」

「事件のことで会わせたい奴もいるし、いいからつき合え」

円士郎は強引に隼人を伴って宵の町に出かけて行ってしまって、
お酒があんまり好きでも得意でもない私は、二人を見送って屋敷に残った。
< 905 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop