恋口の切りかた
【円】
料亭の座敷で、並べられた料理をつつきながらちびちびと酒を口に運び、鬼之介は慣れない様子で周囲に目を走らせていた。
「珍しいな、貴様がこのような場所を選ぶとは……」
「ま、今日は隼人も一緒だしな」
無理矢理隼人を伴って町に出かけた俺は、怪我の癒えつつある鬼之介を引っ張り出し、事件を調べる者ということで、隼人に鬼之介を紹介した。
例の蜃蛟の伝九郎と白蚕糸のこともあったし、本当は遊水とも話がしたかったのだが、前に言っていたとおり本業のほうが忙しくなったせいだろう。
裏の世界に通じた操り屋は、今月に入ってからはパタリと姿を見せなくなってしまっていた。
「お前が宮川家の次男か」と、隼人は鬼之介を眺め回して、鬼之介がカラクリの解明を担当していると説明してやると、意外にまともに調査する気じゃねえかよと何やら驚いた様子でぼやいた。
鬼之介はあまり酒は強くなく、飲ませ続けると青白い顔がますます青白くなっていくのだが、隼人は俺と同じで酒には強いようだった。
鬼之介に天照についての進展を尋ね、色々方法を模索しているがどれも人を燃やすには至らない火力だと聞かされたりしつつ──
銚子の酒を隼人とほとんど二人だけで空けて、程良く酔いが回ってきたところで、
俺は「さっきの道場でのことだがよ」と、気になっていた話題を振ってみた。
何となく、留玖とのことについて隼人に何かを気取られたような気がしていた。
「ああ。あんたおつるぎ様のこと、妹として見てないだろ」
うお!?
やっぱりか。
隼人が鋭すぎる指摘をあっさりと口にして、俺は思わずのけぞり、鬼之介が酒を吹いてむせ返った。
「縁談云々の話ぶりは、妹に対する兄としての独占欲と言うより、ありゃ惚れた自分の女を取られたくない男のセリフだね」