恋口の切りかた
「そうは言っておらん」
図書は神崎の鋭い眼光にも全く動じない涼しい顔でそう答えて、俺は「おっ」と思った。
俺には必死にヘコヘコして、隼人にはコケにされ、伊羽にはビビりまくっていた気弱そうなオッサンだが──
神崎への態度を見ると、このひょろっとした町奉行にもやはり威厳というものが存在しているように感じられる。
「渡世人とは言え死人が出過ぎておるし、同心の片瀬までもが怪死して、上の方々も事態を重く見ておいでなのだ。
この助役は、世情に通じた円士郎様と剣の腕に長けた秋山を見込まれた、城代家老の伊羽様直々の提案と聞いておる。
よいな、有り難く円士郎様にご助力を請うのだ」
伊羽様直々の提案、ね。
高津図書が俺たちに好意的なのは、この理由が大きいようだ。
俺は城で執政を取っているあいつにこっそり、
どうやらあんたのことを心から信頼しきってる奴がここにもいるようだぜ、と心の中で伝えた。
町奉行所は何も、城下の事件の調査や訴えに対する裁きを下すばかりが業務ではない。
他にも市政に関する仕事が山積みで、図書は早々に「事件については神崎からお聞き下され」と言って仕事に戻り──
「突然、番方が助役だなどといったいどういうわけだ」
渋々といった様子で俺たちに調査の状況を説明し、やはり納得のいかない様子で神崎は問いただしてきた。
捜査の進展状況のほうはと言えば、さすがに片瀬が銀治郎一家の者を目明かしとして使っていたことなどは調べ上げていたものの、完全に手詰まりといったところだった。
図書は神崎の鋭い眼光にも全く動じない涼しい顔でそう答えて、俺は「おっ」と思った。
俺には必死にヘコヘコして、隼人にはコケにされ、伊羽にはビビりまくっていた気弱そうなオッサンだが──
神崎への態度を見ると、このひょろっとした町奉行にもやはり威厳というものが存在しているように感じられる。
「渡世人とは言え死人が出過ぎておるし、同心の片瀬までもが怪死して、上の方々も事態を重く見ておいでなのだ。
この助役は、世情に通じた円士郎様と剣の腕に長けた秋山を見込まれた、城代家老の伊羽様直々の提案と聞いておる。
よいな、有り難く円士郎様にご助力を請うのだ」
伊羽様直々の提案、ね。
高津図書が俺たちに好意的なのは、この理由が大きいようだ。
俺は城で執政を取っているあいつにこっそり、
どうやらあんたのことを心から信頼しきってる奴がここにもいるようだぜ、と心の中で伝えた。
町奉行所は何も、城下の事件の調査や訴えに対する裁きを下すばかりが業務ではない。
他にも市政に関する仕事が山積みで、図書は早々に「事件については神崎からお聞き下され」と言って仕事に戻り──
「突然、番方が助役だなどといったいどういうわけだ」
渋々といった様子で俺たちに調査の状況を説明し、やはり納得のいかない様子で神崎は問いただしてきた。
捜査の進展状況のほうはと言えば、さすがに片瀬が銀治郎一家の者を目明かしとして使っていたことなどは調べ上げていたものの、完全に手詰まりといったところだった。